なぜ税金を払いたくないのか?
今まで会計事務所で働いてきて感じたのは、法的に適正な納税額を提示しても、とにかく税金は払いたくない!とか、もっと減らしたい!というお客様がほとんどでした。
誰でも自分が稼いだお金や保有する財産を強制的に奪われるのは嫌です。
ただ、その奪われたお金が回りまわって自分のところに直接又は間接的に返ってくると分かれば、少しはその「奪われる!」「取られる!」という気持ちが和らぐのかもしれません。
今回は、税金は本来のどのような機能を果たすことを目標としているのかを確認し、その本来の機能が果たされているかをみてみたいと思います。
1.税金が果たす本来の機能とは?
私は税理士試験免除を受けるため、日本の大学院にも通ったのですが、そこで租税法を学び、税金は本来どのような機能を果たすために必要なのかを学びました(参考文献:金子宏・租税法 第23版(平成31年・弘文堂)。
その機能は3つあります。
- 公共サービスの資金調達
- 再分配
- 景気調整
最初の公共サービスの資金調達ですが、国や地方公共団体が国民に公共サービスを提供するための資金源として、税金が必要ということです。具体的なサービスは、国防、裁判、警察、公共事業のように私的企業の競争原理に任せるとまずいサービスです。また準公共サービスとして、公教育や公営住宅の建設等です。これらは国民の安全、公平、快適な社会生活を保つために重要なサービスです。
次は再分配機能です。日本の資本主義経済では、市場経済の競争に勝ったものがどんどん富を蓄積できる制度となっています。この制度により資本(お金)を沢山持っている企業や個人はこの市場原理で増々有利となり、富が偏っていきます。その偏って溜まったお金の一部を税金として徴収し、お金が回ってこない企業や人に分配してあげる機能です。
最後の景気調整機能ですが、これは景気が過熱すれば増税をし、後退すれば減税をして急激な経済変動を避けるための機能として税金を使うものです。
2.3つの機能が果たされていない
税金が公共サービスの為に使われているのは事実ですが、それが国民の安全、公平、快適な社会生活の為に使われているかは疑問です。確かに国を守る国防費は増えていますが、国民のためというよりは、アメリカの為や現政権の維持のためのように思えます。また司法の裁判も、現政権への忖度により機能してない面がありますし、公共事業も無駄なものが多く、国民のために税金を使っているようには思えません。
再分配についても、今の日本は積極的に機能させようとしているようには思えません。所得税の税率も戦後最高税率は75%だったのが、徐々に下がり今現在は45%まで下がってます。昔、富裕税というのもありましたが、富裕層からの圧力で廃止されました。これでは、富の偏りは抑えられません。また分配される側でいえば、年金や生活保護費などが削減されつつあります。
景気調整機能は全く機能していません。景気が悪いのに消費税率を8%から10%に上げたり、大企業は内部留保額が最高となって景気がいいのに、法人税率はどんどん下がり、今では23.2%まで下がりました。
3.まとめ
以上のように、税金を払っても、そのお金が無駄に使われるのであれば、誰も払いたくないと思うのも当然です。上記で説明しました税金のあるべき3つの機能がうまく働けば、お金が回って、経済が安定し、税金を多く取られる富裕層の方々にもメリットがあると思うのですが…。今後の日本がどうなるか心配です。