人間の初期設定は不幸になるようにできている

巷の人生相談で「どうしたら幸福になれますか?」

という質問をよく聞きます。

これは裏を返せば、人間は何もしない状況では

人生を不幸に感じるということです。

要は、人間は自然のままだと不幸になるように

できているということになります。

人間は自分に足りないものに焦点が向くようにできている

医者で心理療法士でもあるラス・ハリスによると

「人間の心の初期設定は、自分が持っていないものに

注意を向けるようになっている」そうです。

その結果、自分の持っていないものが満たされない

人生を不幸と感じてしまうようです。

これは、人類の進化の過程で、自分に不足するものに

焦点を当て、それを克服しようとする気質を持った者が

原始時代において生き残こり、そうでない者は

淘汰されたからとだといいます。

例えば当時、力の弱い人間が、怪力のマンモスに

どう立ち向かい、それを食料としたかです。

自分の持っていないもの(力の強さ)に焦点を当て

それを克服しようとする気質を持った人間は、

武器を作ったり、集団で狩りをすることを考えつき

弱肉強食の世界を生き抜いてきました。

現代はその気質が不幸をもたらす

自分に持っていないものに焦点を当てるという

人間の気質は、原始時代の生存競争では役に立ちました。

では現代ではどうでしょうか?

現代では猛獣に襲われて、

命を失うことは、ほぼありません。

確かに、自分に持っていないものを克服しようとする

意志と行動は、人間の成長を促進すという

大きなメリットがあります。

しかしその反面、自分が持っていないものに

焦点を当てる結果として

今現在の自分は不幸であると認識してしまう

デメリットの方が大きいのではないでしょうか?

先ずは焦点を当てていない部分があることに気付くこと

人間のこの生まれ持った気質は変えることはできませんが、

この気質の存在を自覚することと、意識的な努力により

この不幸感を軽減することはできると、ラス・ハリスは主張します。

その努力の1つは、確かに自分には持っていないものがあるが、

その一方で、持っているものも沢山あるということに気付くことです。

そして、それらにも焦点を当てるのです。

例えば大切な人が亡くなった場合でも、周りにはまだ他にも

自分の支えとなる人々やものがあることに気付く努力が必要だ

というのです。

自分が持っているものに感謝する

そうは言っても、わたしには持っているものが

何もないと言い張る人もいると思います。

そういう人は、自分が持っているものが当たり前過ぎて、

その存在に気付いていないだけかもしれません。

例えば、目でものを見ることができるとか、

心臓が問題なく鼓動しているとか。

これらは多くの人には当たり前のことですが、

当たり前でない人もいます。

わたしの場合、心不全(頻脈)で3年前に手術をしました。

その病気が悪化したときは、心臓が普通に鼓動することが

なんと有難い事なのかを実感しました。

しかし、術後回復してしばらく経つと、

健康であることに慣れて、それが当たり前になります。

そして次第に、有難い気持ちも薄れてきます。

ですから、意識して定期的にそれらを思い出し、

今自分が持っているものに感謝することが、

幸福な人生を送るための第一歩だということです。

参考文献

『自分自身にやさしくすれば悩みの出口が見えてくる』ラス・ハリス(筑摩書房・2021.11)

『幸福になりたいなら幸福になろとしてはいけない』ラス・ハリス(筑摩書房・2015.12)

編集後記

最近、英語の勉強を毎日30分程しています。

勉強といえば、通常ストレスになりますが、

わたしにとって英語の勉強は気分転換と

癒しになっています。