確定申告の医療費控除(1):保険金絡みの間違いやすい点と注意点

毎年税理士会の一般納税者向け確定申告無料相談(実地及び電話)の仕事に従事しています。

その相談の中でも、医療費控除についてのお問い合わせが非常に多いです。

今後の確定申告の備忘録という意味合いも込めて、医療費控除の間違いやすい点、

及び注意点について書いてみたいと思います。

今回はその中でも特に間違えやすい医療保険金がらみの医療費控除について見ていきます。

保険金額がその対象となる医療費を上回る場合の注意点

「保険会社から入院保険金を受け取ったのですが、医療費控除の計算の際、

その保険金全額を医療費から差し引くんですよね?」という質問がありました。

なお、入院保険金の方が実際の入院医療費よりも多いとのこと。

そういう場合は、入院保険金の全額を医療費から差し引くのではなく、

入院のために支払った医療費の額を差し引くよう注意してください。

要は、「入院保険金の額 > 入院医療費の額」の場合は入院医療費の額を差し引きます。

<参考>国税庁HP/質疑応答事例/所得税/支払った医療費を超える補充金

なぜなら、仮に入院保険金の全額を差し引いてしまうと、入院以外の医療費の部分も

差し引かれることになり「入院のための」保険金の意味がなくなってしまうからです。

なお、「入院保険金 < 入院医療費」の場合は、入院保険金の全額を差し引いて大丈夫です。

保険金はまだ受け取ってなくても見積計上しなければならない

当年12月に入院して、保険会社から入院保険金が支給されることは決まっているが、

翌年3月の確定申告期限までにその金額が確定していない場合、

みなさんは医療費控除の計算をどうされますか?

多くの納税者は保険金が確定する翌年の医療費から差し引けば良いと考えるようです。

しかし通達では、保険金の見積額を当年の入院医療費から差し引くよう指示があります。

(所得税基本通達73-10)

<参考>国税庁HP/質疑応答事例/所得税/医療費を補充する保険金等が未確定の場合

なお、確定申告後に保険金額が判明し、見込額とズレがあった場合は、

更正の請求、又は修正申告を提出して調整することになります。

*申告の二度手間を避けるため、還付申告になることが分かっている場合は、

保険金が確定するまで待って、期限後申告でも良いでしょう。

ケガや病気で受け取る保険金は非課税

入院保険金など、ケガや病気が原因で受け取った保険金は非課税です(所法9①十八、令30)。

よって、確定申告の際、一時所得などとして申告しないよう注意願います。

また、がんなどの病気が判明した際に支給される保険金も非課税となります。

*なお、がん診断給付金などは治療のための保険金ではありませんので、

医療費控除の計算の際に医療費から差し引く必要はありません。

編集後記

税理士の年36時間研修受講義務ですが、期限3月末までに何とか履行できました。

36.5時間とギリギリでしか受けませんでしたが…。